私と愛とスカート
私は笑いながら、つまんね、と思った。手首の内側に巻かれた小さな腕時計へと目をやる。のろのろと動き続ける秒針が一周するのを、私は悟られないように、前髪で顔を隠しながら見ていた。 早く帰りたかった。居酒屋特有の喧噪も、黄色...
私は笑いながら、つまんね、と思った。手首の内側に巻かれた小さな腕時計へと目をやる。のろのろと動き続ける秒針が一周するのを、私は悟られないように、前髪で顔を隠しながら見ていた。 早く帰りたかった。居酒屋特有の喧噪も、黄色...
「好きになった」 薫子の目はとても真剣で、冗談を口にしているようではなかった。すごい、と素直に思う。彼女はいつだって、こうなることができるのだから。「何を?」 この一言を言うためだけに、私はここに来たのだと、深く実感した...
僕と愛とスカート終わりと 僕は冒険にあこがれていた。ここではないどこか、いまだ誰も見たことのない世界を、僕が一番前に立ってきりひらいていく。動物園の臭いをぎゅっと濃くしたような獣臭に、きいたことのないほどおぞまし...
僕と愛とスカート アパートの階段の一番下、制服姿のまま僕は腰をおろす。夕焼けの空は夜色と混じり合い、不思議な感じがした。 ローファーが地面を蹴る、硬い音。同じ中学の制服をきた泉ちゃんは僕を一瞥して、階段をあがり...