姉は、小さい頃からとにかくよく喋る人でした。
4つ上の兄と2つ上の姉、日々ケンカをしながら過ごしていたぼくらだったけれど、1人では分の悪い姉とぼくは、よく結託して兄と戦いました。
遊び盛りだったぼくはよく兄姉に構ってもらっていたのを覚えています。
兄とはゲームキューブのスマブラで対戦ゲームをやって、姉とはDSのどうぶつの森でお互いの村で釣りをして遊んでもらいました。
ぼくの興味や考え方は、姉に影響されることがとてもとても多かったのだと、今になって思います。
姉が赤いたまごっちを買ってもらったらぼくも欲しがり、ねだって買ってもらい、育てたキャラが姉の期待にそぐわないキャラになってしまったのではないかと、ベビーおやじっちのキモいドット絵をみて震えることもありました。
でも家に帰ってきた姉がベビーおやじっちをみて、
「可愛い」
と言ってくれて、その途端、ベビーおやじっちがめちゃめちゃ可愛く見えるようになりました。
こう聞くと、姉とすごく仲が良いように見えるかもしれませんが、そんなこともなかったのです。
些細なことでしょっちゅう口げんかしたし、姉はよくぼくのことをばかにしてきました。
選ぶ洋服、髪型、きく音楽、高校入試、どれをとっても、選んだものをすべてばかにされてきたと言ってしまえるくらい、色々口出しをされてきたように思います。
口論になることも多かったし、すごく腹が立つことばかりでした。
当時は、何を選んだのだとしても、
“姉に何と言われるか”
が気になって仕方ありませんでした。
そこから月日は流れ、あまり話すこともなくなっていった頃、ぼくがニュージーランドの留学から帰ってきた年、大学3年生の姉はとにかくよく喋りました。
浪人生だったぼくは家で勉強していたこともあって、帰ってきた姉と2人、よく話したのです。
気づいたら3時間以上も経っており、帰ってきた母に気付かされることもしばしばありました。
ぼくにとって姉とは、いつだって”正しい者”でした。
自らの正しさを信じるために、言葉を尽くそうとしている。
姉にとって、ぼくは悩みを相談する相手ではなかったように思います。
言葉を挟む間もくれず、とにかく、わーーーっと、じぶんの考えや言いたいことを言う。
いつだってそんな存在だった弟のぼくは、姉の考えには迷いがないのだと思い込んでいました。
でも本当は違くて、きっと、誰かに断言して話すことで、それを正しいものにしたかったのだと思います。
姉はじぶんの大好きなサークルの話、そしてありえない行動をする彼氏の話をよくしました。
サークルの動画を笑いながら見せる姉を見て、その激しさに18歳のぼくはドン引きをしていたし、彼氏の愚痴をきいて、ぼくは”彼氏かわいそうだなぁ”と密かに思っていました。
そんな姉が結婚するとなったとき、これは大変だぞ、と思いました。
姉は信じるものが強くて断定的です。
彼女は愛が強い。
人を振り回すし、人を信じるし、人を好きなんです。
その激しさを、許容できる人でなければ、いずれぶつかって壊れてしまうと思いました。
でも彼氏をみて、何の心配もいらないなぁと思ったのでした。
姉からきいていた通りの人だと、そう思いました。
散々きいてきたノロケ。
どういった価値観が合うのか。
どこに惹かれたのか。
姉が大事にしたいこと。
彼が大事にしてるとこ。
きっと嘘偽りなく、彼は姉にとっての”正しい人”なのだろうと思いました。
悲しみはありませんでした。
むしろ嬉しくて、そして使命感を覚えていました。
姉夫婦がもしケンカすることになったら、絶対に夫の味方をしたいと思っています。
姉には頼りになる大好きな親友たちがいますし、どう考えても夫の方が大変です。
たぶん、一番、姉の裏表ない真っ直ぐな言葉を聞き続けたぼくだからこそ、姉が何を思い、どんな気持ちでいるのかを、この世の誰よりも、丁寧に、正しく、夫に伝えることができます。
だからぼくは、2人の関係が壊れないように、きちんと夫に伝えて、夫サイドとしていたいと、そう思うのです。
兄の結婚式が楽しすぎて、姉の結婚式も、ぼくは楽しみでたまりませんでした。
みんなが誰かのことを考えて、祝福している。
こんな幸せ空間が他にあっていいのかと思うくらい、素敵で、優しくて、暖かい。
そんな、めちゃめちゃ楽しみで前日ろくに寝られなかった姉の結婚式で。
披露宴の最中、前触れもなく、新婦の中座のエスコート役として、ぼくが呼ばれました。
めちゃめちゃ美味しい料理に舌鼓をうっていた時の出来事で、口をもぐもぐさせたまま身体が硬まりました。
最初は意味がわからず、かっこ悪いことにキョロキョロして。
そっから前に呼ばれて、姉の前に立って。
彼女は気恥ずかしげに、はにかんで笑っている。
今までみたどんな姉の姿よりも綺麗で、白いドレスが似合っていて、幸せそうでした。
そしたら急に、感動してきて、この日のために準備してきた姉や旦那さんの思いもきいていたから、なんだから嬉しくてたまらなくなって。
遠い席で、ずっと見守っているだけだったから、間近で目を合わせて、一言二言話したら、急に現実感というか、今まさにここにいるんだということがわかって。
本当に、じぶんが大事な役をするだなんて、まったくもって一ミリも想像していなかったから。
ぼくにとっての姉の存在と同じくらい、姉にとってのぼくの存在も、大事だって言ってくれているみたいで、すごくすごく、心から嬉しかった。
姉ちゃん。
結婚おめでとう。
昔はケンカもたくさんしたし、決して美しい姉弟関係じゃないけれど。
ぼくは今でも、人に胸張れる立派な人間じゃないけれど。
姉ちゃんがいたから、今のじぶんがあります。
そしてぼくは、じぶんのこと嫌いじゃないです。むしろいいと思ってすらいます。
姉ちゃんから、自信過多と人好きについて学びました。
姉ちゃんの話す、大好きな人たちと会えて、うれしかったです。
みんな姉ちゃんが言った通り、よくお酒を飲んで、よく笑って、人のことをよくみていて、人が大好きな人たち。
たくさんの好きを持っている姉ちゃんが、大好きです。
たくさんの大好きを見せてくれて、ありがとう。
姉ちゃんたちがやりたかったこと、大切にしたいこと、それらすべてがつまった、最高の結婚式でした。
これからも幸せに生きてください。
P.S
好きな人たちと一緒にいる姉ちゃんの笑顔、めちゃめちゃ素敵です
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