実際にあったまんじゅうこわい

こんにちは、ようすけです。

 

小学生の頃、NHKで放送されていた連続テレビドラマ小説、「ちりとてちん」を毎日欠かさず観ていてハマったぼくは、落語に興味を持つようになりました。

「ちりとてちん」

は貫地谷しほりさん演じる女の子、和田喜代美(わだきよみ)が落語と縁を結んでいくお話なのですが、”落語”という一見古めかしくてとっつきにくそうな題材でありながら、現代に面白おかしく落とし込んでくれている良作で、めちゃめちゃ面白いです。

 

「まんじゅうこわい」

はそんな”ちりとてちん”に出てきた落語のお話の一つです。

家に集まった4、5人の男たちが、

「俺はヘビが怖い」

「おいらは母ちゃんだな」

みたいにそれぞれの怖いものを話していく中、一人の男が肩をガタガタと震わせて、顔を覆います。

「おらぁはまんじゅうがこわい……」

「まんじゅう???」

みんな首をかしげて、顔を見合わせました。

あまりの怖がりっぷりに面白くなってしまった他の男たちは、一ついたずらをしてやろうということで、まんじゅうを怖がる男の家にまんじゅうを投げ込みます。

さぞ驚き、泡を吹いているに違いないと思って男たちが覗くと、そこにはまんじゅうを美味しそうに頬張る彼の姿が。

「おい、お前まんじゅうが怖いんじゃなかったのかよ!」

「お前さんが本当に怖いのはなんなんだってばよ?」

ときくと、彼はまんじゅうを平げて満足げな表情で、こう言ったのです。

 

「今はアツ〜い、お茶がこわい」

 

お後がよろしいようで。

 

べん、べべん。

ここから実際にあった”まんじゅうこわい”の話

ぼくは三兄弟の末っ子として育ったのですが、小学生の頃はお菓子や甘いものが大好きな子どもでした。

もらったお年玉を大事に大事に、お菓子のために使っていたのを今でも覚えています。

ただ、当時の兄と姉はとても横暴で、何かにつけていちゃもんをつけたり奪ったりしてくるところがあり、ぼくがなけなしの小銭で買ったアイスを冷凍庫に入れておくと勝手に食べる上に、なんでじぶんの分しか買ってこないのかと問い詰められ、挙句ケチ呼ばわりされるような日々でした。

 

そんなぼくは自然と、じぶんで買ったお菓子を自身の洋服ダンスに隠すようになったのです。

机の中や他の場所では兄姉に見つかって食べられてしまう。

そう思って、絶対に開けられないであろう洋服ダンスの、一番奥。

未開封で大事に取っておきたいポッキーやおっとっと、おせんべいにひもQなどのお菓子を、大事にしまっていました。

 

駄菓子屋やスーパーで、少し買って、タンスの中にしまって、ちょっとずつ楽しむ。

素晴らしい日々でした。

タンスの中に入った二から四種類くらいの小さなお菓子をみるのが、ぼくにはとっても幸せなことだったのです。

 

ある日学校から帰ってきて、ランドセルをおろしたぼくは、ふと甘いものが食べたくなって洋服ダンスを開けました。

そこには小さなおまんじゅうが6個入ったパックがありました。

何か特別な日のために。

そう思って取っておいたおまんじゅうを、食べるのは今しかありませんでした。

特別な日に食べるのではなく、食べることで特別な日にするのです。

それはとっても良い考えだと思ったぼくは、ペリペリとプラスチックの包装をとって、茶色い薄皮で、こしあんのぎゅっと詰まったおまんじゅうを口に運びます。

「美味しい」

もぐもぐと食べながら、幸せを感じてました。

 

2個目、食べようか食べまいか。

もう一つだけ、と口の中でつぶやいて、ペリペリ、もぐもぐ。

美味しかったです。

甘いものはやっぱり最高です。

 

そして15分後、ぼくは地獄を見ることになったのです。

おえおえおえおえ。

上からも下からもとまらなくなって、クラクラして、何度も何度もおえおえおえおえ。

 

まさかと思って這いつくばって洋服ダンスを開けて、おまんじゅうのパックの裏、バーコードの上を見ます。

賞味期限は、1ヶ月以上も前に切れていました……。

 

徐々に暗くなっていく視界。

ぼやけた頭のスミで、こう呟いたのです。

「まんじゅうこわい……」

 

これ以降、ぼくがまんじゅうを食べることはなかったのでした。

 

この話を友だちにしたら、

「で、ほんとは何が怖いの?」

ってきかれました。

 

うーん、とちょっと悩んで。

そうだなぁ。

「今はナマ〜の、牡蠣がこわい」

 

お、お後がよろしいようで…!

べん、べべん。

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