未来のあたしは、無色透明
染まった気でいた。 色はもう確定していて、動かすことはできない。 東京のビル群を眺めながら、あたしはペットボトルの水のラベルを剥がす。 なんて透明なのだろう。 16歳、あたしは何も知らなかった。 26歳、きっと変...
染まった気でいた。 色はもう確定していて、動かすことはできない。 東京のビル群を眺めながら、あたしはペットボトルの水のラベルを剥がす。 なんて透明なのだろう。 16歳、あたしは何も知らなかった。 26歳、きっと変...
森の中にも日の光が届くことに、驚く 少しだけ、少しだけ。 木漏れ日は、届きそうで、ふと伸ばしたくなる手を静かに引っ込めた。 わたし、馬鹿みたい。 在りたい姿がある。 曲げられない気持ちを、曲げないための理由づくり...
太陽はまだ、沈みそうにない。 炎の真ん中の、一番眩しいところ、みたいな黄色が砂浜を照らしている。 海の音がぽわぁんと頭の中で響いては、暗闇に飲み込まれたみたいにすんって消える。 まるで私みたい。 そう、ひとりごち...
吉田くんは、今日も勇気が出せない。 吉田くんは好きなものがたくさんあった。 商店街にある、小さな小さな本屋の、怖い顔したおっちゃん店長が作っている、可愛らしい丸文字のポップも。 同じマンションの、平日7時45分に家を...
ここでテーマとか、主義主張とかはあえて述べず。 ただ、書き続けたのだということを、書き記す。 誰に見てもらえているのかもわからず、誰かひとりでも面白いと思ってくれているのかもわからず。 100まで、折り返し地点なので...
「人生って、別に生きる意味ないじゃないですか」 「生きる意味、か」 「はい。だからたまに分からなくなるんです。何をすればいいのか、どれが正解なのか、って」 「せいかい」 「土井さんが言葉を大事にする方だって、ゆんちゃんか...
1 え、ここどこ ってまなかが思ってポストの陰に隠れたのは、隣の家から出てきた幼馴染の顔が、どう見ても昨日とまるきり変わって、老けていたから。 いや、あいつだよね? だってあの家から出てきたし と心の中で呟きつつ、彼に兄...
君のこと想う その正しい言葉のピース ジグソーパズルみたいには うまくハマってくれない 歌はたくさんあるけれど 当てはまるものでもないみたい 僕と君との地図 位置情報はオフ 何もかもがバラバラで 言葉と心が噛み合わな...
私は笑いながら、つまんね、と思った。手首の内側に巻かれた小さな腕時計へと目をやる。のろのろと動き続ける秒針が一周するのを、私は悟られないように、前髪で顔を隠しながら見ていた。 早く帰りたかった。居酒屋特有の喧噪も、黄色...
友だちと錦糸町で飲んでいて、時刻は0時を回ろうとしていた。 「田中みな実って、なんであんな女性人気が高いんだろう?」「努力しているところが、じぶんでも出来るかもって思わせてくれるからじゃない?」店員さんが早く帰りたそうな...