どうも、PairStylesのようすけです。
友だちと別れ、深夜の渋谷を一人で歩いていたら、金髪の白人の女の子二人組と出会って、一緒に牛丼を食べ、次にまた会う約束をして別れました。
何を言っているかわからないと思うけれど、ぼくもわかりません。笑
今回はその経緯を語っていきたいと思います。
とにかく気分は最悪だった
1.
悪態をつきたい気分だった。
テンションはとてもとても下がっていて、こうして一人、真っ暗で誰もいない渋谷の街を歩いているだなんて、バカらしい、と思った。
たまにそういうことがある。
やるせない気持ちになって、なんだか損した気分になって、でも悔しくて、どうにか得した気持ちになれないかと、近くに落ちている幸運を探したくなる。
まるまるの”せい”っていう言葉を使いたくなくて、まるまるの”おかげ”になれるよう、今だからこそできることに目を向けてみる。
ぼくはどうにか楽観主義者になりたいのだ。
道玄坂からセンター街に入る小道に自販機が見えて、とりあえず飲み物を買おうと思って、近づくと、人の気配がした。
シャッターが降りたお店の前、4段くらいしかない階段に座った白人の若い女の子二人組がこちらを見ている。
どうやって声をかけたのかは、今となっては定かではないけれど。
自販機に小銭を一枚ずつ入れながら、英語なら通じるだろうと当たりをつけて、口を開く。
「君たちに飲み物を奢らせてほしいんだけど、どうかな?」
ぼくとしては、どうにかしてこの下がりきった気持ちを良いものに変えるために、深夜の渋谷で外国人の女の子と仲良くなった、というネタがほしかった。
ネタというと、聞こえは悪いけれど。
仲の良い友だちに、何か話せることができたなら、このしみったれた気持ちも幾分マシになるように思えた。
彼女たちはクスクスと笑って、
「ありがとう。でも飲み物は持っているから大丈夫だよ」
と答えた。
「そっか、残念。君たちは何をしてるの?」
自販機からごとん、と音がして、ぼくはかがんでポカリをとる。
「クラブにいって踊ってたの」
二人は金髪で、それぞれベージュと淡いピンク、色違いのダウンを着ていた。
この暗さとマスクで曖昧だったけれど20代前半くらいだろうか。
互いに話すときは英語ではなく、ヨーロッパのどこかの国の言葉を使っているようだった。
ペットボトルの蓋をあけて、一口飲んでから、彼女たちの方を見る。
「何かご馳走したくて仕方がないのだけれど、お腹はすいていない?」
これがダーシャとターニャ、22歳のロシア人女の子二人との出会いだった。
2.
「ラーメンはどう? 一蘭って知ってる?」
深夜ということもあり、開いているお店はほとんどない。
24時間あいているお店なんて一蘭くらいしか知らなくて、しかもぼくはラーメンを食べたかった。
タワーレコードの隣にある一蘭を目指して歩く道すがら、ぼくは彼女たちの身の上話をきく。
ロシアの大学から日本に留学できている大学生ということや、今は大学の長期休暇で暇を持て余していること、夏にはまたロシアに帰ってしまうことなどを教えてくれた。
「日本はすごくいいところ。ロシアは何もないの、つまらないわ」
ダーシャはうんざりした顔をして、肩をすくめる。ターニャもこくこくと頷いた。
「そうなの? ロシアはすごくいい国だってきいたけど。美人も多いって言うし」
「あー、かなぁ。……まあ私たちは違うけどね!笑」
「え、何言ってるの。二人ともめちゃめちゃ美人じゃん」
二人は顔を見合わせて、クスクスと笑う。
スクランブル交差点には、まったく人が見当たらなくて、まるで死んだ後の世界みたいだった。
きっと一人で歩いていたら、寂しすぎる景色。
シャッターの降りきった居酒屋と、灯らない路上看板。
頭上のランプを光らせた空車のタクシーがぼくらの横で一度減速して、また加速する。
「日本語は話せるの?」
「チョットだけ……笑」
「難しいよねー」
「今勉強中だよー。ひらがなとカタカナはだいたい読める」
「すごいな。おれロシア語全然わからない」
「Zdravstvujtyeがロシア語の挨拶」
「ずどらぁすと、ゔぃーちぇ?」
「そうそう、そんな感じ。Zdravstvujtye」
「ずどるぁすと、ゔぃーちぇ!」
マクドナルドを過ぎ、渋谷MODIの大きな建物が見える。
一蘭の真っ赤な看板が目に入るも、明かりはついていない。
「まじか、一蘭やってないっぽい……」
一蘭の店内へと続く階段を降りて確認するも、やっぱりあいていない。
「めちゃめちゃごめん、どうしよっか……。美味しいもの食べたいよなぁ」
「牛丼は? さっきあいてたよ」
「いい? じゃあ牛丼にするか〜」
3.
こうしてぼくらは松屋にいって、牛丼を食べた。
その後センター街にあるコインロッカーから、ユニクロで買った服を取り出して、ぼくらは駅へと向かう。
「よかったら今度さ、二人の写真撮らせてよ」
「写真? どんな写真なの?」
「こういうの、趣味でやってるんだ。今度浅草とかで撮りたくて」
とっさの思いつきだ。
特に理由があったわけではなかった。
ぼくは今まで撮ってきた友だちの写真を彼女たちに見せて、こんな風に撮影しようと思ってる、と伝えた。
「どうかな?」
「私は遠慮しとく。じぶんの顔があまり好きじゃないの」
ターニャは言った。
「え、美人なのに」
彼女は薄く笑って、首を横にふる。
「いいよ、私やるー」
ダーシャがこっちを向いて、にこりと笑った。
「え、いいの? じゃあ今度やろー!」
「おーけー。インスタ持ってる?」
こうしてぼくらはインスタグラムのアカウントを教え合い、渋谷の駅でわかれたのだった。
また会うかもしれないし、もう二度と会わないかもしれない。
なんだか嫌な気分でもやもやしていた夜に起こった、不思議な出会いに、ぼくは心から感謝をしていた。
この日この瞬間に、ぼくの気持ちが晴れず、深夜の渋谷を歩いていてよかったと、心底思う。
また会う約束をした。
なくなるかもしれないその約束に、ぼくは少しの幸福を感じて、幸運を噛み締めている。
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