言葉が湧き上がるというよりかは、絞り出すというのが近い。
仲の良い友達と会うことのいいところは、特別何をやるかを真面目に考える必要がないところにある。
ご飯を食べてもいいし、ドライブにいってもいい。
ただ逆に言えば、真面目に考えることを放棄してしまうのは、いささか問題だった。
ぼくらはいつだって、不真面目に考えてしまう。
魚釣りをしたい、というのはここ数年抱き続けた願望だった。
ぼくの記憶の限りでは、釣りをしたことがない。
いや、一度大学生の頃、サークルの先輩に誘われて、渋谷で釣竿と餌を買ったあと、電車で向かった千葉側の東京湾から釣り糸を垂らしたことがあった。
魚は一匹も釣れなかったから、ぼくらはそれを釣りとは呼ばなかっただけだ。
特別仲のいい友人と二人、治りかけの二日酔いの頭で、何をしようかと考えた。
お酒はもうこりごりだった。
温泉や海、山などが出かけ先の候補として出たところで、ぼくの気持ちはだいぶ温泉に寄っていたのだけれど、彼は乗り気そうではなかった。
「釣りはどう?」
彼が乗り気になった途端、今度はぼくが微妙な反応を見せた。
時刻は14時を周り、車で一時間以上かかる秋川国際マス釣り場の閉まるまでは、時間はあまりないように思われる。
時間にゆとりがないのは、ゆとり世代としてはどうも許せないため、ぼくは本日の釣りに大賛成とはほど遠い。
それでもとりあえず行ってみようと、ぼくらは不真面目に出発した。
間に合わなかったら仕方がない。
これもまた、親しい仲だからこその心構えであった。
釣りの時間には間に合って、2,3組しかいない川辺でぼくらはぶどう虫を針につけて釣りを始めた。
友人は釣りの専門用語を塩ラーメンくらいさっぱりと使いこなして、なんだか玄人感がある。
記憶にある限りでは初めてだったぼくは、そもそも虫を針につけるところから苦戦し、その後30分をかけて釣ったニジマスをどう対応すればいいのかわからず騒ぎ立てたのだけれど(魚は針にかかって暴れていた)、友人はそれを冷めた目で見ていた。
ぎゃーぎゃー騒ぐぼくを見て、
「JKみたいな反応ですね」
と彼は言う。
言われたとたん、なんだか足元がすーすーして、恥ずかしい気持ちになった。
小学生の頃に男子トイレと間違えて女子トイレに入ってしまった時くらい恥ずかしかった。
それにしても、仲の良い友人といけて本当によかったと、心から思う。
これでもう次回からは取り乱すことなく、くだらないほどにかっこつけて釣りをすることができる。
釣りができる男はかっこいいに決まっている。
ちなみに釣果はぼくが6,彼が3だった。
塩焼きとソテーにして、美味しくいただいたのだけれど、内臓の処理なども自分たちでやったため、かなり興味深い初体験であった。
ところでお前、女子高生と魚釣りに来たんか?
いつ??
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