無様な姫の物語
姫はひどく無様だった。 身に纏う衣装はどの国々の王子や王女よりもみすぼらしい。 住まう宮殿は犬小屋と見まがうほど小さく、国民の方がよっぽど立派な家に住んでいた。 水油を塗らせてもらえない髪は艶やかとは言い難く、匂い立つお...
姫はひどく無様だった。 身に纏う衣装はどの国々の王子や王女よりもみすぼらしい。 住まう宮殿は犬小屋と見まがうほど小さく、国民の方がよっぽど立派な家に住んでいた。 水油を塗らせてもらえない髪は艶やかとは言い難く、匂い立つお...
くきききき、と笑い声のような木の軋む音がする。 アルコールとポップコーンが焦げたのが合わさった、複雑な臭い。 ピアノのメロディがぽろん、と聴こえたかと思ったら、泡のように消えた。 “それ”は人の形をしていたが、顔の表情は...
「おじい、連れてきたよ!! これでおじいはもう苦しまずに済むんだよね?!」 病室に駆け込む少年に腕を引かれて、私はうつむいたまま、部屋へと足を踏み入れた。 ほんとにほんと? 本当にこの世に、死ぬ間際におっぱいを揉みたいと...
「ぼくも夢を見つけられただろうか」 ぼくには強い夢がない。 ミュージシャンとか、サッカー選手とか、美容師とか、ケーキ屋とか。 小学校の卒業式で、一人一人が将来の夢、なりたい職業を語る横で、ぼくは何も思いつかなくて、た...
花火大会のその夜に めいじはかれんが好きだった。 少し自信なさげにハニカむその笑顔も、周りが引くくらいの食べっぷりも。 一緒にいると、何だかどんな時よりもじぶんらしくいられる気がして、いつもは大して好きでも嫌いでもな...