朝起きたらやる気が二倍になってた物語

男子高校生のたろうがスマホの画面を見ると、6時55分。

いつもの目覚ましの時間の5分前、うんいい感じ。

でもYOASOBIは聴きたいから、みゅーじっくアプリを開く。

頭はすっきりしていた、カーテンの隙間から天井にこぼれ落ちた日の光はまばゆい、絶対いい天気だ。

朝だちはしていない。

珍しいけれど、ふむ、そんな日があっても別にいいだろう。

何はともあれ、というか何はよりも、何よりも、たろうは底抜けに気分がよかった。

いい夢を見たのか……?

何一つおぼえてはいないけれど、これだけ気分がいいのだから、もしかしたらいい夢を見たのかもしれない。

いや、と思ったけれど多分、いい夢はみてないな。

でもそうするとおかしいか、こんなに朝起きてすぐ快活でいられるわけがない。

たろうはお気に入りのゴリラ柄のパジャマを着たまま、ベッドの上であぐらをかいて、頭をひねった。

なんでこんなに気分がいいんだろう。

起き抜け特有の、潜ったプールから頭を外に突き出すか否かの境目みたいなボヤボヤの気分はあったけれど、何度も言うけれど、底抜けに気分はいい。

なんか今日一日いいことしか起こらなさそうだ。

心なしか、パジャマにプリントされたゴリラたちもみんな笑ってる気がする。

うほうほ。

今朝はバナナ食べよっと。

なんかあまりにも気分がいいから、もしかしたらたろうは自分がかっこよくなっているかもしれないと思って、標準のカメラアプリで自撮りしてみる。

まあ標準カメラしか持ってないけど。

いややっぱりかっこよくなってはいなかったわ、とさすがに写真は消す。

どうしよう、この気持ちをまず誰に伝えたいですか?

ってヒーローインタビューされてるみたいに、脳内のバンキシャじゃなくて記者がきいてきたから、たろうは少しだけ考えて、にんまりと笑った。

いや、クールにニヒルにふふっと笑った。

 

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