吉田くんとゆきこさんはゆっくり歩く

「ゆきこさん、理由をつけてよ、僕が歩くの遅い理由」

「え、何それ。お腹が痛いから?」

「お、いいねそれ」

「いいの、それ」

「たしかにお腹が痛い気がしてきた」

「だめじゃんそれ! うーん、そしたら、地面の感触を確かめて歩きたいから?」

「おぉ、いいね。実は僕、人魚姫だった、みたいな」

「人魚姫かー、まあありだね」

「ありだね笑 他は、ある?」

「えー、そうだなあ、、、周りの景色を見てるから?」

「景色か。たしかにそうかもしれない」

「それでさ、吉田くんは優しさを探してるんだよ」

「優しさ?」

「うん。いちごミルクみたいな、ふわふわの優しさ」

「甘そうだなぁ」

「吉田くんは甘くないけどね」

「そだね笑」

「……」

「ゆきこさんはさ、ゆっくり歩いてる」

「え、あたし? 歩いてないよ」

「いや、ゆっくり歩いて、きちんと周りの景色を見てるよ」

「なにそれ笑」

「ありがとね、ゆきこさん」

「しぬの?」

「しなないよ。しなない」

「吉田くんかっこつけてる?」

「うん」


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