時間ない物語
時間がない、と言うことが、ただの言い訳だということは、誰よりも何よりもいんちょーにはわかっていた。 そんなの言い訳だ。 自分が本当に成し遂げたいことがあるなら、時間なんていくらだって作れる。 いくら高校生で、バイトをして...
時間がない、と言うことが、ただの言い訳だということは、誰よりも何よりもいんちょーにはわかっていた。 そんなの言い訳だ。 自分が本当に成し遂げたいことがあるなら、時間なんていくらだって作れる。 いくら高校生で、バイトをして...
「好きになった」 薫子の目はとても真剣で、冗談を口にしているようではなかった。すごい、と素直に思う。彼女はいつだって、こうなることができるのだから。「何を?」 この一言を言うためだけに、私はここに来たのだと、深く実感した...
夏。 立夏。 暑い夏。 雨の多い夏。 休みの長い夏。 懐かしい気分になる夏。 ポケモン映画の再放送の夏。 サマーウォーズと時かけの夏。 夏祭りと花火大会に行けなかった夏。 アイス食べて自転車乗ってゲラゲラ笑ってた夏。 風...
「なんで追いかけてくんのよぇ」 舌がもつれた。息が苦しくなって、小刻みに酸素を求める。走ってる最中に叫ぶべきではなかった。そんな後悔をする。 「僕が何をしたっていうんだぁはっ」 だというのにまた叫んでいた。抗議をしな...
あーあ。 この世にいるすべての人くたばんないかなぁ。 なんでぼくだけがこんなにしんどくて苦しい思いをしなければいけないんだろう。 20歳にもなって、ぼくはいまだに死ねずにいた。 死にたいわけではなかった。 だって痛い...
二人でしっぽり飲む、というのもとてもすてきなのだけれど、二人で夜のドライブに行く、というのがもっともっと、すてきだとぼくは思う。 ぼくは車を持っていない。スマホ一つで、どこでも簡単に車を借りられる、カーシェア。その恩...
「え、私? 女子高生だよ、お姉さんってこと。かなだよ」 ゆうたくんには知らないことがいっぱいある。 はーあ、ぼくはまた会えるのかな。 あんなに泣いていたセミさんたちは、もういない。 お母さんが言っていた、セミさんたち...
はー、今日のゆんさんとの飲み、楽しかったなぁと僕はひとりごちる。 いっぱいワインを飲んで、いっぱい笑って、名残惜しさに後ろ髪引かれる思いでの解散。 心地いい。 もう30歳になったのだと、にわかには信じられなかったけれど、...
エモいものだけで続けるしりとりのこと。 あ から始めよ。 あの日食べることのできなかったチョコバナナ な 夏の花火大会 い 生き別れの兄弟 い 意味深な幼馴染との再会 い いたずらっぽい目でウィンクす...
「僕はすべての繋がりを、一度切ってしまいたいんだ」 「つながり? どういうことだ?」 お酒が入っていたからだろうか。私の頭はうまく回らず、まるで雲の上にいるような心地だった。 「繋がりだよ。人間関係、人と人と人との絡ま...