吉田くんとゆきこさんはゆっくり歩く
「ゆきこさん、理由をつけてよ、僕が歩くの遅い理由」 「え、何それ。お腹が痛いから?」 「お、いいねそれ」 「いいの、それ」 「たしかにお腹が痛い気がしてきた」 「だめじゃんそれ! うーん、そしたら、地面の感触を確かめて歩...
「ゆきこさん、理由をつけてよ、僕が歩くの遅い理由」 「え、何それ。お腹が痛いから?」 「お、いいねそれ」 「いいの、それ」 「たしかにお腹が痛い気がしてきた」 「だめじゃんそれ! うーん、そしたら、地面の感触を確かめて歩...
君の顔が好き 強がりなその見た目と正反対 優しい目で笑う君の顔 校則ギリギリなリップとネイル 優しさでくるまれた乱暴な言葉 都会(まち)の窓ガラスの光 反射して君の髪染める 君の顔が好き 強がりなその見た目と正反...
君と一緒のとこなんてないんだよ 怖がり、まっすぐ、人が好き 引き替え、わたしは正反対 ただ自由になりたいだけ ただ自由になりたいだけ “自由”で不自由してるわたし 窓ガラスみたいに光を反射してる “誰か”になりたくな...
「プレゼント、見つかった?」 「わぁっ、ゆきこ先輩近いっす!」 のけぞるぼくを見て、彼女はケラケラと笑う。 細い手首にはシュシュ、ネイルは水色とピンク。 ゆきこ先輩は今日もギャルい。 そしてめっちゃいい匂いがする。 シャ...
染まった気でいた。 色はもう確定していて、動かすことはできない。 東京のビル群を眺めながら、あたしはペットボトルの水のラベルを剥がす。 なんて透明なのだろう。 16歳、あたしは何も知らなかった。 26歳、きっと変...
吉田くんは、今日も勇気が出せない。 吉田くんは好きなものがたくさんあった。 商店街にある、小さな小さな本屋の、怖い顔したおっちゃん店長が作っている、可愛らしい丸文字のポップも。 同じマンションの、平日7時45分に家を...
あたしは、自由だ。 ワンピースという漫画に出会って、あたしはこの世界で誰よりも”自由な存在“になりたいと思った。 でも自由を追い求めようとすればするほど、”自由”に縛られてどこにも行けない。 自由で在らなければいけないと...
「うまいこと言おうとすんなって」 きっと涙目。 ぼくってダサいなぁって思いながら、ゆきこ先輩を睨みつけている。 敬語じゃないし。 ゆきこ先輩怖いから、後でぶっとばされるかもしれないなぁって思いながら。 でも許せなくて、ぼ...
「Fish or Beef?」 いんちょーは初めてのフライトで緊張していた。 席がガタガタ揺れているのは飛行機の振動のせいか、それとも彼女が震えているだけなのか。 金髪のCAさんが、ニコニコしながらこっちを見ている。 「...