私以外みんな不幸せになればいい物語

満月の夜が嫌いだった。

白い街灯も、明るすぎるコンビニの光も。

すべて。

すべて。

夜に輝くすべてのものを呪った。

ぜんぶ消えてしまえばいいと思う。

消えろ。

消えろ。

消えろ。消えろ。消えろ!

いくら願っても、消えてはくれない。

夜って、なんでこんなに苦しいんだろう。

もし夜が暗闇に満たされていたら、こんな気持ちにはならなかったはずだ。

月が輝くから。

街に灯りがあるから。

だから、私はこんなにも空虚を抱えて、自分の胸にあいた暗闇を見つけて落ち込んでしまうんだ。

闇にのまれたくなる夜は、布団をかぶる。

携帯の電源を切って、テレビのコンセントを抜いて、Wi-Fiルーターの点滅する光すら鬱陶しくて、布で覆い被せる。

でも私の暗闇は、一向に馴染んでくれない。

世界から拒絶されるみたいに、外側は明るくて、私の内側だけが黒く塗りつぶされていく。

消えろ消えろ。

みんな消えろ。

楽しそうに話してるみんなも。

何も考えてなさそうなアホなランドセルの子も。

泣き喚いてばかりの赤ちゃんも。

消えろ。

消えろ。

みんな消えろ。

世界には希望なんてない。

勇気だなんてハリボテだ。

幸せは、私のもとにはこない。

自分を憎んで、人を憎んで、この世を憎む。

そんな自分が情けなくて、たぶん本当の闇だなんて知らないクセに私は不幸ぶって、人生を呪って、真っ暗に憧れて。

私は自分が嫌いだ。

不幸だと思い込んでる自分も、不幸になれと他人に願う自分も、すべてが消えてなくなってしまえばいいと思ってる自分も。

この気持ちが、物語みたいに都合よくなくならないことを私は一番わかってる。

別に誰かに救ってほしいわけでも、慰めてほしいわけでも、殺してほしいわけでもない。

同情も共感も発破もいらない。

私はこの気持ちを書き留める。

自分から逃げないために。

自分で自分を救うために。

消えろ。

消えろ。

みんな消えろ。

本当は私も、消えろ。

でも自分が消えたら、たぶん後悔することもなく後悔してしまうから。

だから、消えるな。

消えるな、消えるな。

私よ、消えるな。

嫌いだ嫌いだ。嫌いでたまらない。

満月の夜も。

白い街灯も、明るすぎるコンビニの光も。

すべて消えてしまえ。

呪い尽くしたって構わない。

でも私よ。

消えるな。

消えるな。、

私よ、消えるな。

すべてを嫌って、すべてを呪って、すべてを消したくても。

誰も私のことを救ってはくれない。

だから私は私を、消してはならない。

消えるな。

消えるな。

私よ、生きろ。

今はとりあえず、それだけでいい。

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