美しい言葉で着飾って歩いてみる

善い行いをすると嬉しくなる。

人に優しくすると優しい気持ち。

桜は綺麗。

そんなことを素直に感じられる自分って、やっぱり趣(おもむき)深い。

 

頑張ってる人を応援したい。

他人から悪口を言われても気にしない。

あぁ、好きだなぁって思う。

私って美しい人間。

 

 

そんなことないよって言われる。

あなたは美しい人間じゃないよ。

って。

余計なお世話だ。

うるさいし、そしてうるさい。

美しさに溺れたいのに、自分の心の奥底にいる地底人みたいなやつが、許してはくれない。

いちいち、人の言葉や、日々の生活の中で勝手に感じてしまうイライラを、鬼の首とったみたいに高々と見せつけて、ほうら、お前は美しくなんかないぞ、って言ってくる。

うるさいなぁ。

そんなこと知ってる。

知ってるから、もう少しだけこの美しさに溺れさせて。

深く沈む水底の中ではせめて、清らかな心を持っていると、自分を信じたいのだから。

 

美しい言葉で着飾って歩いてみる

 

そんな自分を見ながら、そんな誰かを見つめながら。

あんなに自分本位で剥き出しの心を持っている人が、美しい言葉で着飾って歩いているだなんて、なんて羨ましいことだろうと思う。

私もあんな風に着飾ることができたら、少しは平気に慣れるのかな。

いや結局、着飾るあの人も家に帰ったら美しさをベッドに投げ捨てて、鏡越しに映る素っ裸の醜い心に嫌気が差しているのかもしれない。

そう思ったら、やっぱり着飾りたくなる。

美しさを言葉にすれば、幾分気持ちは楽になる気がした。

 

だから私は今日も、美しい言葉を探す。

まるで当てのないウィンドウショッピングみたいに、ゆっくりと、楽しんで、試着までしちゃって、結局買わないで、ネットで探そうとか思っちゃう。

 

素敵な髪の色。

可愛いコーヒーショップ。

優しい地域のおばあちゃん。

何でも話せる親友。

散る桜と川に浮かぶ花びら。

春風に夏空。

マンダリンオレンジのTシャツ。

 

美しげな語感を楽しみながら、悩みなんて何もありません、って顔をしてみる。

深い紺色に染まった夜のキャンバスを見ながら、もう描くとこ半月のとこしかねーじゃん、って。

もう記憶になってしまった桜を思い出しながら、桜は散るから美しい、って言葉に、素っ裸の心がこう言った。

 

黙れ! 桜は散らない方が美しいに決まってるだろ!!

 

 

ってそう言った。

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