生まれた理由を知る物語
「人生って、別に生きる意味ないじゃないですか」 「生きる意味、か」 「はい。だからたまに分からなくなるんです。何をすればいいのか、どれが正解なのか、って」 「せいかい」 「土井さんが言葉を大事にする方だって、ゆんちゃんか...
「人生って、別に生きる意味ないじゃないですか」 「生きる意味、か」 「はい。だからたまに分からなくなるんです。何をすればいいのか、どれが正解なのか、って」 「せいかい」 「土井さんが言葉を大事にする方だって、ゆんちゃんか...
1 え、ここどこ ってまなかが思ってポストの陰に隠れたのは、隣の家から出てきた幼馴染の顔が、どう見ても昨日とまるきり変わって、老けていたから。 いや、あいつだよね? だってあの家から出てきたし と心の中で呟きつつ、彼に兄...
時間がない、と言うことが、ただの言い訳だということは、誰よりも何よりもいんちょーにはわかっていた。 そんなの言い訳だ。 自分が本当に成し遂げたいことがあるなら、時間なんていくらだって作れる。 いくら高校生で、バイトをして...
あーあ。 この世にいるすべての人くたばんないかなぁ。 なんでぼくだけがこんなにしんどくて苦しい思いをしなければいけないんだろう。 20歳にもなって、ぼくはいまだに死ねずにいた。 死にたいわけではなかった。 だって痛い...
二人でしっぽり飲む、というのもとてもすてきなのだけれど、二人で夜のドライブに行く、というのがもっともっと、すてきだとぼくは思う。 ぼくは車を持っていない。スマホ一つで、どこでも簡単に車を借りられる、カーシェア。その恩...
「え、私? 女子高生だよ、お姉さんってこと。かなだよ」 ゆうたくんには知らないことがいっぱいある。 はーあ、ぼくはまた会えるのかな。 あんなに泣いていたセミさんたちは、もういない。 お母さんが言っていた、セミさんたち...
あたしは、自由だ。 ワンピースという漫画に出会って、あたしはこの世界で誰よりも”自由な存在“になりたいと思った。 でも自由を追い求めようとすればするほど、”自由”に縛られてどこにも行けない。 自由で在らなければいけないと...
かなはガッキーとか、田中みな実とか、美しい人が好きだった。 2個上で、今はもう大学生になってしまったダンス部のかおり先輩がインスタに載せる、美しいカフェやレストランの写真が好きだった。 そして、瀬戸内寂聴さんの本に綴られ...
満月の夜が嫌いだった。 白い街灯も、明るすぎるコンビニの光も。 すべて。 すべて。 夜に輝くすべてのものを呪った。 ぜんぶ消えてしまえばいいと思う。 消えろ。 消えろ。 消えろ。消えろ。消えろ! いくら願っても、消えては...
「え、中町さんほんと? 明日??」 「はい! 今までクソお世話になりました!! あ、すみません、口が滑りました……。大変お世話になりました」 「いやいや、君もう32歳だよね? ていうかここで働いてもう7年目? どうしたの...