明日から仕事辞ーめたっ物語
「え、中町さんほんと? 明日??」 「はい! 今までクソお世話になりました!! あ、すみません、口が滑りました……。大変お世話になりました」 「いやいや、君もう32歳だよね? ていうかここで働いてもう7年目? どうしたの...
「え、中町さんほんと? 明日??」 「はい! 今までクソお世話になりました!! あ、すみません、口が滑りました……。大変お世話になりました」 「いやいや、君もう32歳だよね? ていうかここで働いてもう7年目? どうしたの...
「わたしさ、早く大人になりたい」 「わかる、まじお母さんだるいわ」 「ゆきこちゃん、たぶんカナカナが言いたかったのは、もう少し深い意味なのでは?」 注意する私を無視して、ゆきこちゃんはニヤリと笑う。 はー、カナカナの話っ...
姫はひどく無様だった。 身に纏う衣装はどの国々の王子や王女よりもみすぼらしい。 住まう宮殿は犬小屋と見まがうほど小さく、国民の方がよっぽど立派な家に住んでいた。 水油を塗らせてもらえない髪は艶やかとは言い難く、匂い立つお...
僕と愛とスカート終わりと 僕は冒険にあこがれていた。ここではないどこか、いまだ誰も見たことのない世界を、僕が一番前に立ってきりひらいていく。動物園の臭いをぎゅっと濃くしたような獣臭に、きいたことのないほどおぞまし...
「私はさ,”私たちの秘密“を守りたかったんだぁ」 「私たちの、秘密、ですか」 「そう、秘密秘密、私と鈴だけの、ちっぽけな秘密」 「嬉しそうで、悲しそうな表情。……笑ってるのですか?」 「わかんない。自虐の笑いかなー。鈴に...
くきききき、と笑い声のような木の軋む音がする。 アルコールとポップコーンが焦げたのが合わさった、複雑な臭い。 ピアノのメロディがぽろん、と聴こえたかと思ったら、泡のように消えた。 “それ”は人の形をしていたが、顔の表情は...
いやぁ、暑すぎませんか。 こんなの溶けてしまいそうです。 どうしましょう。 身体が重たいです。 はー、面倒ですが、仕方ないですね。 ぬくぬくとエアコンの効いた部屋で6年間も過ごしてた、生粋のインドア派である僕ですが、やる...
Not Alone 「誰かの歌をきいて、涙を流すなんて、嘘だと思ってた」 「うそ?」 「うん、嘘。たかだか4分間の音のつらなりで、心が動かされてたまるかって。だれも4分の短編小説とか読切漫画とかでは泣かないでしょ...
「あなた、どこいくんですか」 「暇だし、ちょっと出かけようと思ったんだが、……くるか?」 「外は涼しそうですし、いいかもしれませんね。お洗濯ものたたんじゃうので、少し待ってください」 「おう」 おじいは履きかけていた...
僕と愛とスカート アパートの階段の一番下、制服姿のまま僕は腰をおろす。夕焼けの空は夜色と混じり合い、不思議な感じがした。 ローファーが地面を蹴る、硬い音。同じ中学の制服をきた泉ちゃんは僕を一瞥して、階段をあがり...