そういえば僕が異世界で勇者をやっていた頃、その世界では珍しい銀髪のハーフエルフが、裏路地で暴漢に絡まれているところに出くわしたことがあった。
瞳は紫がかっていて……、
ってそんなわけあるかぁ。
そんなわけあるかぁ⤴︎。
そういえばファンタジーが大好きなぼくは、異世界に憧れて、「行ってみて〜」と思っていた時期があった。
今だって、もしかしたら行きたいかもしれない。
ただ、戦うのというか、暴力物があまり好きじゃないぼくは、正直異世界に行っても心も身体も持て余しそうだなぁとか、思っていた。
しかも友だちもいないし、インターネットもないし、シャワーの水圧はたぶん弱いし。
そういえばアニメで異世界に飛ばされるのは、いつもニートや、会社に絶望した社会人とか、いじめられてる高校生だ。
今この世界に居場所のない人たち。
その人たちを送る先が、現代世界とはまるっきり違う、異文化の異世界なんだ。
ぼくは今、この世界に居場所がないわけではないと思う。
そもそも、この世界に居場所がないと思ったことは、一度たりとてない。
でも、それでも異世界には憧れるし、行ってみたいなぁとも、やっぱり思わなくもない。
それはなぜだろう。
みんな異世界には行ってみたいものなのかな。
そういえば、異世界と海外は何が違うのだろう。
異世界に行きたいと思っている人たちは、異国の地で暮らしてみたいと思っているのだろうか。
それとも、異世界の魔法とか、ファンタジー動物とか、剣とかに憧れるのだろうか。
勇者になりたいだとか、火影になりたいだとか、そういう願望を持ったことがないからわからないのだけれど、人は偉くなりたいの?
いや、彼らにとってその称号は、他者から広く認められることの証明でしかないのか。
他者から認められる。
すごいね、って思われる。
たしかにそれは気持ちよさそう。
きっと現実世界ですごいね、って言われるのを諦めた人が、異世界で一念発起して、新しい能力を開花させてがんばって、すごいねって言われるための物語なのかもしれない。
たしかに。
今所属しているコミュニティではこれ以上、すごいね、って言われなさそう、って思ったとき、もしかしたら他の場所に行くというのは大事な選択肢になるかも。
あと、すごいねの量も大事だけど、すごいねの質も大事だよなぁ。
誰からのすごいね、なのか。
小学生に喧嘩で勝って、すごいすごいと持て囃されても、みっともないもんなぁ。
でもじゃあぼくら個人個人にとって、誰からすごいねって言われるのが重要で、とっても大切なことなんだろう。
うーん。
わからない。
どこの世界で勇者になりたいのか。
誰にとっての勇者でいたいのか。
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