私以外みんな不幸せになればいい物語
満月の夜が嫌いだった。 白い街灯も、明るすぎるコンビニの光も。 すべて。 すべて。 夜に輝くすべてのものを呪った。 ぜんぶ消えてしまえばいいと思う。 消えろ。 消えろ。 消えろ。消えろ。消えろ! いくら願っても、消えては...
満月の夜が嫌いだった。 白い街灯も、明るすぎるコンビニの光も。 すべて。 すべて。 夜に輝くすべてのものを呪った。 ぜんぶ消えてしまえばいいと思う。 消えろ。 消えろ。 消えろ。消えろ。消えろ! いくら願っても、消えては...
「え、中町さんほんと? 明日??」 「はい! 今までクソお世話になりました!! あ、すみません、口が滑りました……。大変お世話になりました」 「いやいや、君もう32歳だよね? ていうかここで働いてもう7年目? どうしたの...
「わたしさ、早く大人になりたい」 「わかる、まじお母さんだるいわ」 「ゆきこちゃん、たぶんカナカナが言いたかったのは、もう少し深い意味なのでは?」 注意する私を無視して、ゆきこちゃんはニヤリと笑う。 はー、カナカナの話っ...
姫はひどく無様だった。 身に纏う衣装はどの国々の王子や王女よりもみすぼらしい。 住まう宮殿は犬小屋と見まがうほど小さく、国民の方がよっぽど立派な家に住んでいた。 水油を塗らせてもらえない髪は艶やかとは言い難く、匂い立つお...
僕と愛とスカート終わりと 僕は冒険にあこがれていた。ここではないどこか、いまだ誰も見たことのない世界を、僕が一番前に立ってきりひらいていく。動物園の臭いをぎゅっと濃くしたような獣臭に、きいたことのないほどおぞまし...
「私はさ,”私たちの秘密“を守りたかったんだぁ」 「私たちの、秘密、ですか」 「そう、秘密秘密、私と鈴だけの、ちっぽけな秘密」 「嬉しそうで、悲しそうな表情。……笑ってるのですか?」 「わかんない。自虐の笑いかなー。鈴に...
くきききき、と笑い声のような木の軋む音がする。 アルコールとポップコーンが焦げたのが合わさった、複雑な臭い。 ピアノのメロディがぽろん、と聴こえたかと思ったら、泡のように消えた。 “それ”は人の形をしていたが、顔の表情は...
いやぁ、暑すぎませんか。 こんなの溶けてしまいそうです。 どうしましょう。 身体が重たいです。 はー、面倒ですが、仕方ないですね。 ぬくぬくとエアコンの効いた部屋で6年間も過ごしてた、生粋のインドア派である僕ですが、やる...
Not Alone 「誰かの歌をきいて、涙を流すなんて、嘘だと思ってた」 「うそ?」 「うん、嘘。たかだか4分間の音のつらなりで、心が動かされてたまるかって。だれも4分の短編小説とか読切漫画とかでは泣かないでしょ...
「あなた、どこいくんですか」 「暇だし、ちょっと出かけようと思ったんだが、……くるか?」 「外は涼しそうですし、いいかもしれませんね。お洗濯ものたたんじゃうので、少し待ってください」 「おう」 おじいは履きかけていた...