僕と逃げると、物語
「なんで追いかけてくんのよぇ」 舌がもつれた。息が苦しくなって、小刻みに酸素を求める。走ってる最中に叫ぶべきではなかった。そんな後悔をする。 「僕が何をしたっていうんだぁはっ」 だというのにまた叫んでいた。抗議をしな...
「なんで追いかけてくんのよぇ」 舌がもつれた。息が苦しくなって、小刻みに酸素を求める。走ってる最中に叫ぶべきではなかった。そんな後悔をする。 「僕が何をしたっていうんだぁはっ」 だというのにまた叫んでいた。抗議をしな...
二人でしっぽり飲む、というのもとてもすてきなのだけれど、二人で夜のドライブに行く、というのがもっともっと、すてきだとぼくは思う。 ぼくは車を持っていない。スマホ一つで、どこでも簡単に車を借りられる、カーシェア。その恩...
「え、私? 女子高生だよ、お姉さんってこと。かなだよ」 ゆうたくんには知らないことがいっぱいある。 はーあ、ぼくはまた会えるのかな。 あんなに泣いていたセミさんたちは、もういない。 お母さんが言っていた、セミさんたち...
はー、今日のゆんさんとの飲み、楽しかったなぁと僕はひとりごちる。 いっぱいワインを飲んで、いっぱい笑って、名残惜しさに後ろ髪引かれる思いでの解散。 心地いい。 もう30歳になったのだと、にわかには信じられなかったけれど、...
エモいものだけで続けるしりとりのこと。 あ から始めよ。 あの日食べることのできなかったチョコバナナ な 夏の花火大会 い 生き別れの兄弟 い 意味深な幼馴染との再会 い いたずらっぽい目でウィンクす...
「僕はすべての繋がりを、一度切ってしまいたいんだ」 「つながり? どういうことだ?」 お酒が入っていたからだろうか。私の頭はうまく回らず、まるで雲の上にいるような心地だった。 「繋がりだよ。人間関係、人と人と人との絡ま...
あたしは、自由だ。 ワンピースという漫画に出会って、あたしはこの世界で誰よりも”自由な存在“になりたいと思った。 でも自由を追い求めようとすればするほど、”自由”に縛られてどこにも行けない。 自由で在らなければいけないと...
「うまいこと言おうとすんなって」 きっと涙目。 ぼくってダサいなぁって思いながら、ゆきこ先輩を睨みつけている。 敬語じゃないし。 ゆきこ先輩怖いから、後でぶっとばされるかもしれないなぁって思いながら。 でも許せなくて、ぼ...
「Fish or Beef?」 いんちょーは初めてのフライトで緊張していた。 席がガタガタ揺れているのは飛行機の振動のせいか、それとも彼女が震えているだけなのか。 金髪のCAさんが、ニコニコしながらこっちを見ている。 「...
他人に勝手に期待して、勝手に失望する。 20歳になった今もその過ちを繰り返している。 京子自身がもう”それ”に飽き飽きとしていることを、まなかは親友として、痛いほど理解していた。 いきなりのライン電話、午前2時、踏切も望...